滋賀県東近江市甲津畑町に位置する「甲津畑町セツブンソウ生育地保護区」は、希少植物であるセツブンソウ(節分草)の群生地を保護するために設立された特別な区域です。
この保護区は、約2ヘクタールの広さを持ち、棚田や畑地の斜面、石垣などにセツブンソウが自生しています。
セツブンソウという希少な植物の保護とその美しい自生地の維持を目的としています。
甲津畑町セツブンソウ生育地保護区の概要

- 場所: 滋賀県長浜市甲津畑町(こうづばたけちょう)
- 植物: セツブンソウ(学名:Eranthis pinnatifida)
- 保護区の設立目的: セツブンソウの保護と、その自然環境の保全
- 規模: 約2ヘクタールのエリア
甲津畑町のセツブンソウは、有名な場所では有りませんが、知る人ぞ知るスポットです。
この地域では、セツブンソウが豊富な地下水と適度な日照を受けて、非常に良好な状態で育ちます。
また、地域の住民や地元の団体による保護活動が積極的に行われており、適切な管理のもとで生態系が保たれています。
棚田の法面にさいているので、下から見上げる感じで お花の表情が見やすく好きです。
背景の里山の雰囲気も美しく、癒される場所です。
下草刈りなど、手入れがされ 大切に育てられていると感じます。
設立の背景と目的
甲津畑町は鈴鹿山脈の麓に位置し、田園風景が広がる里山地域です。この地域では、滋賀県レッドデータブック2005年版で絶滅危機増大種に指定されているセツブンソウが群生しています。
特筆すべきは、県内でセツブンソウが主に石灰岩地域に分布する中、甲津畑町は石灰岩地域ではないにもかかわらず、豊かな群生地が存在する点です。この独特な分布は学術的にも高い価値があり、将来的な保全の必要性から、2011年(平成23年)3月31日に「甲津畑町セツブンソウ生育地保護区」として正式に指定されました。
保護活動と地域の取り組み
保護区内では、セツブンソウの生育環境を維持するため、地域住民やボランティア団体が中心となって以下の活動を行っています。
- 保護看板の設置
自然環境を守りながら、観光客が訪れるために看板を設置し、セツブンソウの保護区を明確に区分けしています。また、保護のための注意喚起の看板を設置し、観光客に対して植物や生態系を守るためのマナーを啓発しています。 - 地元ボランティアの活動
地元の住民やボランティア団体が中心となり、定期的な清掃活動や、適切な草刈りなどを行い、生育環境を整えています。これにより、セツブンソウの生育に適した環境が維持されています。 - 教育と啓発活動
地元の小学校や中学校などで、セツブンソウの生態や保護の重要性についての教育活動が行われています。また、訪れる観光客に対しても、案内板やパンフレットを通じてセツブンソウの保護に関する情報を提供しています。 - 乱獲防止と巡視活動:山野草の愛好家や商業目的による乱獲を防ぐため、定期的な巡視活動が行われ、セツブンソウの個体数保護に努めています。

ネット情報では、フェンの設置とありましたが、フェンスは有りませんでした。
民家の裏手の土手の部分で、直ぐ近くで観察できます。
防御ネットなども有りません。
東斜面で、西日は当たらない感じです。
東は、民家の建物があり、ちょうど良く陰になっています。
ほんとに、民家の裏手!なので、看板がなければ発見できないと思いました。
生育条件の維持のための環境管理の指針
棚田や畑地の斜面上または石垣垣などの生育地を保全するため、
・農地の維持管理、野生動植物の調査その他指定に係る希少野生動植物種の保護に支障のないものを除き、土地の形質の変更は行わないものとする。
・ 環境管理 条例違反行為に対する巡視を行うほか、所有者、周辺住民および関係団体と連携協力して維持につとめるものとする。
・山野草の愛好家または商業目的などによる乱獲を防ぐ必要がある。
農作業の一環として行われてきた草刈りなど、人間による植生管理によって結果的に群落が維持されてきた。
大変なご努力があると、理解しました。
甲津畑町地区へのアクセスと観賞のポイント
- アクセス:
JR北陸本線「長浜駅」から車で約30分。の距離にあります。名古屋方面からは国道421号線を利用するのが便利ですが、春先は積雪が残る場合があるため、車の運転には十分注意が必要です。 - 観賞のベストシーズン:
例年2月中旬から3月下旬にかけてが見頃とされています。この時期にはセツブンソウの白い花が一面に咲き誇り、美しい風景を楽しむことができます。 - 観賞時の注意点:
自然保護区であるため、植物の採取や踏み荒らしは厳禁です。また、セツブンソウの花は非常に繊細であり、人が踏みつけたり、土壌が荒れたりすることで簡単に損傷してしまいますので、注意して観賞しましょう。訪問の際は、自然環境への配慮をお願いいたします。

伊吹山の麓にある、セツブンソウの自生地(大久保地区)を見てから移動したので、結構な時間が掛かりました。
名古屋方面からは、国道421号が良いと思いますが、春先は石榑峠から永源寺ダム辺りには、積雪がありますのでスリップ注意です。
路肩の側溝に蓋がないところがあるので、落ちないよう注意しましょう。
冬季で封鎖される狭い峠などと違い、広い道路なので大型トラックも通ります。
ツーリングのライダーも多いので賑やかではありますが、スピードは控え目に。

今回訪れた日は、2023年3月4日。
この年は、雪が少ない年で、石榑峠の残雪も少ない年でした。
3月上旬が見頃なのではないでしょうか。
伊吹山の麓では、2024の3月は、セツブンソウの咲いている時に雪が降り、花が埋まったそうですが、
甲津畑町は、地理的に南に位置するので良い環境だと感じます。
甲津畑町地区のみなさまへ感謝

ここは、特に観光地でもなく、知る人ぞ知るスポットだと思います。
それにも関わらず、駐車場までご準備頂き、感謝致します。
非常に分かり難い場所ですので、助かりました。

ありがとうございました。
訪れて思うこと
甲津畑町セツブンソウ生育地保護区は、地域の人々が長年にわたり保護活動を行い、美しい自然を守り続けてきた場所です。
セツブンソウの可憐な花々を楽しむだけでなく、自然環境を守る大切さを実感できるスポットでもあります。
訪れる際は、保護活動の意義を理解し、マナーを守って楽しみましょう。
また来年も、元気で咲く姿が見られることを楽しみにしています。

セツブンソウとは?

セツブンソウ(節分草、Eranthis pinnatifida)はキンポウゲ科セツブンソウ属の多年草で、日本固有の植物です。
セツブンソウ(節分草)は、その名のとおり「節分」の時期に花を咲かせることから名付けられました。しかし、実際の開花時期は地域や気候条件によって異なり、関東周辺の自生地では3月に入ってから開花することもあります。
早春に白い花を咲かせることで知られており、通常は2月から3月にかけて見られます。その花の姿は、清楚で美しく、寒さの厳しい冬が終わり春の訪れを告げる「春の使者」として親しまれています。しかし、セツブンソウは生育条件が厳しく、全国的にも群生地が少ないため、保護の対象となっています。
野生種の個体数は減少傾向にあり、特に自生地では保護が求められています。
このように、セツブンソウの名称は節分の頃に咲くことに由来していますが、開花時期は地域や気候によって前後することがあります。

(1) セツブンソウの特徴
- 学名:Eranthis pinnatifida
- 分類:キンポウゲ科セツブンソウ属
- 花の色:白色(花弁のように見えるのは萼片)
- 草丈:10cm前後と小さく、可憐な姿
- 葉:細かく切れ込みが入った羽状葉を持つ
- 開花時期:2月~3月(地域による差あり)
- 花の形状:中央には紫色の蜜腺があり、黄色い雄しべとのコントラストが美しい
(2) 生育環境と分布
- 主な生育地:本州(関東・中部・近畿地方の山間部)
- 好む環境:石灰岩質の土壌、落葉樹林の林床
- 開花のタイミング:雪解け後の早春、地面の温度が上昇し始める頃
- 環境適応力:石灰岩の多い土壌を好み、湿度が適度に保たれる場所を選ぶ
(3) 受粉と種子散布
- 受粉:ハナバチやアブなどの早春に活動する昆虫による
- 種子散布:エライオソーム(脂肪分を含む種子の付属物)を持ち、アリが巣に運ぶことで分布を広げる
- 発芽条件:一定の寒冷期を経た後に発芽するため、環境の変化に敏感
(4) 希少性と保護活動
- 絶滅危惧種に指定される地域も多い
- 主な脅威:盗掘・乱獲、環境破壊、生育環境の消失
- 保護活動:各地で自生地の保護区が設置され、観察ルールが設けられている
- 持続可能な栽培:園芸用に流通することもあるが、野生株の保護が重要視される
セツブンソウは、その可憐な姿と生育の難しさから、愛好家や研究者の間でも特別な存在とされています。適切な保護活動を行いながら、その美しい花を未来に残していくことが求められています。
スプリングエフェメラルの生存戦略

春先に短期間だけ姿を現し、その後地上部が枯れてしまう植物を「スプリングエフェメラル(Spring Ephemeral)」と呼びます。これは「春の妖精」という意味を持ち、セツブンソウをはじめ、カタクリ、アズマイチゲ、フクジュソウなどが代表的です。
スプリングエフェメラルの植物は、冬の寒さが和らぎ始めると、いち早く芽を出し、花を咲かせます。そして、春が深まるにつれ、周囲の植物が成長して葉を広げる前に、短期間でライフサイクルを完了させます。これにより、春先の強い日光を十分に浴びて光合成を行い、栄養を蓄えた後、地上部が枯れ、地下の球根や根茎にエネルギーを貯めて休眠します。この特性により、「春の短命な妖精」として親しまれています。
セツブンソウがスプリングエフェメラルと呼ばれる理由
スプリングエフェメラルは、厳しい環境下で生き抜くために、独自の生存戦略を持っています。短期間に成長し、種を残すための巧妙なメカニズムが備わっており、他の植物とは異なるユニークな生存方法を確立しています。
- 開花時期が限られる:2月~3月の雪解けの頃の、限られた期間にだけ咲く。
- 短期間でライフサイクルを終える:開花から1か月ほどで葉も枯れ、地中の球根のみが残る。
- 競争を避ける戦略:夏には大型植物が繁茂する前に成長を終えることで、生存競争を回避する。
- 日光を最大限活用:落葉樹の葉が茂る前に光合成を行い、効率よく栄養を蓄える。
- 昆虫との共生関係:早春に活動するハナバチやアブを利用して効率的に受粉を行う。
短期間でライフサイクルを完結
スプリングエフェメラルは、春先のわずか1か月ほどの間に 成長 → 開花 → 受粉 → 結実 → 種子散布 を終えます。その後、地上部は完全に枯れ、地中で次の春を待ちます。
- 早春の森では日光が十分に届く → 他の植物が成長する前に、光合成を最大限行える。
- ほかの植物と競争しなくて済む → 早めにエネルギーを蓄え、他の草木が茂る頃には地下に退避。
- 低温でも成長可能な細胞構造を持つ → 春先の寒冷な環境でも効率的に細胞分裂を行い、急速に成長。
- 開花期間を短縮し、効率的に繁殖 → 他の植物が芽吹く前に、確実に受粉し、種子を形成。
効率的な光合成によるエネルギー蓄積
- 広い葉を持ち、短期間で最大限の光合成を行う
- 光合成能力が高く、球根や根茎に素早く栄養を貯える
- 成長速度が速く、限られた期間で繁殖の準備を完了
- 強い日光を効率的に利用するため、葉の配置が工夫されている
- 気孔の開閉を適切に調整し、水分の蒸散を抑えながら光合成
地下に栄養を貯え、厳しい環境を回避
- 地下の球根や根茎に栄養を蓄える → 夏の乾燥や高温期には地中で休眠。
- 耐乾性を持ち、次の春に向けてエネルギーを確保
- 土壌の温度変化に対応しやすい球根構造を持つ
- 冬の低温を感知し、最適なタイミングで発芽を開始するメカニズムが備わっている
昆虫やアリとの共生による繁殖戦略
スプリングエフェメラルは、短期間で効率的に受粉し、種子を広げるために、特定の昆虫と密接に関係しています。
- 早春に活動するハナバチやアブによる受粉 → 早春は花が少なく、これらの昆虫にとって貴重な蜜源となる。
- アリによる種子散布(エライオソーム戦略) → 種子に脂肪分を含む付属物(エライオソーム)を持ち、アリが餌として巣に運ぶことで種子が広がる。
- 風による受粉を補助する仕組みも持つ → 風が強い環境では、花粉が遠くまで運ばれやすい形状に進化。
- 発芽率を高めるため、土壌の微生物との相互作用も重要 → 有益な微生物と共生し、成長を促進する。
このように、スプリングエフェメラルは 「短期間で活動し、地中で耐える」 という巧妙な生存戦略を持っています。その進化は驚くべきものであり、厳しい自然環境の中で生き抜くための独自の適応能力を備えています。
まとめ

セツブンソウは、スプリングエフェメラルとして 「短期間でエネルギーを蓄え、地下で耐える」 という独自の戦略で厳しい環境を生き抜いてきました。この植物は、寒冷地の厳しい冬を耐え忍び、春のわずかな期間にだけ花を咲かせ、種を残すという独特なライフサイクルを持っています。しかし、近年では環境破壊、土地開発、そして乱獲の影響により、多くの自生地が消滅の危機に瀕しています。
特に甲津畑町では、貴重なセツブンソウの自生地が守られています。地元の人々や自然保護団体による努力のおかげで、この美しい花が群生する景観が維持されており、毎年の開花時期には訪問者がその魅力を堪能することができます。また、観察ルールを設けることで踏み荒らしを防ぎ、持続的な保護活動が行われています。
私たちが適切なマナーを守りながら自然を楽しむことで、セツブンソウの美しい姿を未来の世代にも残すことができます。写真を撮る際には踏みつけないよう気をつける、花や種を持ち帰らないなど、訪れる際には一人ひとりが環境保護に貢献できる行動を心掛けることが重要です。
春の訪れとともにひっそりと咲くセツブンソウ。その儚さと美しさを目に焼き付けるために、そっと足を運んでみませんか?