年末になると、やることは多いのに、なぜか心が落ち着かない。そんな感覚を抱えたまま年を越してしまう人は少なくありません。今年は何を頑張ったのか、どんな時間が印象に残っているのか──考えようとしても、頭の中が散らかっていて言葉にならない。
実はこの状態、多くの人に共通しています。だからこそ、年末には「計画」よりも先に「整える」時間が必要です。
手帳は予定を書く道具というより、思考や気持ちを静かに並べ直すための場所。たった数分でも、ペンを持って書き出すだけで、不思議と心が軽くなっていきます。
本記事では、年末にやっておくと気持ちが整う手帳ワークを5つ厳選しました。どれも特別な準備はいりません。1年をちゃんと終わらせて、新年を気持ちよく迎えるための「書くだけ習慣」、今日から取り入れてみませんか。
年末に「手帳ワーク」が効く理由とは?

年末になると、多くの人が「来年どうしよう」「このままでいいのかな」と、漠然とした問いを自分に向け始めます。振り返りたい気持ちはあるのに、忙しさや疲れも重なって、考えれば考えるほど気持ちがまとまらず、不安だけが膨らんでしまうことも少なくありません。
頭の中だけで整理しようとすると、思考と感情が絡まり合い、かえって結論が出なくなってしまうのです。
そんなときに役立つのが、手帳を使ったシンプルなワークです。
重要なのは、やることを増やすことでも、立派な答えを出すことでもありません。今の自分の気持ちや考えを、一度“外に出す”こと。
それだけで、頭の中に溜まっていたものが言葉として並び、状況を少し距離を置いて見られるようになります。書くことで気持ちは可視化され、「何が不安だったのか」「何に疲れていたのか」がはっきりしてきます。
すると、不思議と絡まっていた考えがほどけ、心に静かな余白が生まれていくのです。
やること整理より“気持ちの整理”が先
年末にありがちなのが、「来年の予定」や「やるべきこと」から考えてしまうことです。1年の終わりが近づくと、「このままでいいのかな」「来年はもっとちゃんとしなきゃ」と、少し焦った気持ちになる人も多いのではないでしょうか。
そんな状態でスケジュールや目標を立てようとしても、心の奥ではどこか引っかかりが残りやすく、計画がしっくりこないことがあります。
でも、その前に本当に大切なのは、今年の自分が何を感じ、どんな思いを抱えてここまで来たのかを知ることです。
疲れた気持ちを抱えたまま次の計画を立てても、どこか無理が出ます。気合いで前に進もうとしても、心が置き去りになっていると、途中で息切れしてしまうことも少なくありません。だからこそ、まずは感情を整える時間をつくることが大切です。
「嬉しかった」「悔しかった」「もう十分頑張った」──そんな素直な気持ちに目を向けるだけで、心の緊張は少しずつゆるんでいきます。気持ちが整うと、不思議なことに、次の一歩はぐっと軽くなります。
頭の中を書き出すだけで心が軽くなる理由
書くという行為には、思考や感情を整理する力があります。普段は頭の中で混ざり合っている不安や迷いも、言葉として紙の上に並べてみると、自然と距離を取って眺められるようになります。「こんなことで悩んでいたんだ」「ずっと気にしていたのはここだったんだ」と気づくだけでも、心は少し落ち着いていくものです。
頭の中だけで考えていると、同じ思考をぐるぐる繰り返してしまいがちですが、書き出すことで思考は一度外に出ます。それにより、感情に飲み込まれる感覚が和らぎ、自分を客観的に見つめ直す余裕が生まれます。結果として、「今は答えを出さなくてもいい」「ここまで来た自分を認めよう」と、自然に受け止められるようになるのです。
スマホではなく「手で書く」意味
スマホは便利ですが、通知や情報が絶えず流れ続ける場所でもあります。ちょっと振り返るつもりが、気づけば別の情報に意識を引っ張られてしまうことも少なくありません。一方、手帳は自分だけの静かな空間です。誰に見せるわけでもなく、評価されることもない場所だからこそ、本音を書きやすくなります。
ペンを持って文字を書く時間そのものが、気持ちを整えるスイッチになります。ゆっくりと文字を書きながら呼吸が落ち着き、思考のスピードも自然と緩んでいきます。その感覚こそが、年末に必要な「立ち止まる時間」。手で書くという行為は、心と向き合うための、とてもシンプルで確かな方法なのです。
「1年をしっかり振り返りたい人はこちら」
手帳ワーク①|今年の「できたこと」を集めるページ

年末になると、どうしても「できなかったこと」や「うまくいかなかった場面」ばかりが頭に浮かびやすくなります。忙しい日々を振り返るほど、反省点ばかりが強調され、「この一年、何をしてきたんだろう」と自分に厳しい視線を向けてしまうこともあるでしょう。
でも、それでは1年を正しく振り返ったとは言えません。このワークでは、あえて視点を変え、「できたこと」だけを書き出していきます。
どんなに小さなことでも構いません。大きな成果や目に見える結果である必要もありません。「朝きちんと起きて仕事に行った」「投げ出さずに続けた」「不安な気持ちと向き合った」──そんな日々の行動こそが、本当の積み重ねです。
行動した事実を一つひとつ集めていくことで、自分が立ち止まらずに進んできたことに、静かに気づけるはずです。
このページは、自分を評価するためではなく、ちゃんと歩いてきた道のりを確認するための場所。書き終えたとき、きっと心の奥に、ほっとする感覚が残ります。
成果じゃなく「行動」を書くのがコツ
結果が出たかどうかではなく、「やってみた」「続けた」「向き合った」といった行動に目を向けましょう。目に見える成果がなくても、その行動自体に大きな意味があります。
うまくいかなかった経験や、途中で立ち止まった時間も含めて、それらはすべて前に進もうとした証です。
成果だけで1年を評価してしまうと、多くの頑張りが見えなくなってしまいますが、行動に注目すると景色は大きく変わります。そこにこそ、本当の努力や積み重ねがあり、自分を正しく認め直すことができるのです。
自信がない人ほど効く理由
自信がないと感じている人ほど、このワークの効果は大きいです。自信が持てない多くの理由は、「できなかったこと」ばかりに目を向けてしまうから。
実際に書き出してみると、思っている以上に多くの行動をしてきた自分に気づけます。「頑張ったと言っていいんだ」と感じられる瞬間が増えることで、少しずつ自己評価の軸も整っていきます。
手帳ワーク②|心に引っかかった出来事の棚卸し

楽しかったことだけでなく、モヤっとした出来事も、確かにこの1年を形づくってきた大切な一部です。嬉しい思い出だけを振り返っても、心の奥に残っている違和感や引っかかりは、なかなか消えてくれません。
このワークでは、そうした心に残っている出来事や感情を、そのまま手帳に書き出していきます。無理に答えを出そうとしたり、きれいにまとめようとする必要はありません。
大切なのは、「どう整理するか」を考える前に、「何が引っかかっていたのか」を自分自身が認識することです。言葉にして外に出すことで、ぼんやりしていた感情の輪郭が少しずつ見えてきます。
評価や反省は後回しで構いません。まずはありのままを書き留めることが、心を軽くする最初の一歩になります。
モヤっとしたことを封印しない
嫌な記憶ほど、見ないふりをしたり、「もう終わったことだから」と心の奥にしまい込んでしまいがちです。一見すると楽な選択に思えますが、実はこうした感情は、完全に消えることはありません。ふとした瞬間に思い出されたり、別の不安として姿を変えて現れることもあります。
でも、手帳に書いて外に出すことで、感情は少しずつ整理され、自然と落ち着いていきます。文字として目に見える形になることで、「こんなふうに感じていたんだ」と自分自身が理解できるようになり、心の緊張もやわらいでいきます。
反省ではなく“気づき”に変える書き方
「ダメだった」「失敗した」と評価してしまうと、振り返りは自分を責める時間になりがちです。そうではなく、「あのとき、こう感じた」「こう思って無理をしていた」と事実と感情を切り分けて書いてみましょう。
出来事そのものではなく、自分の気持ちに目を向けることで、自然と“気づき”が浮かび上がってきます。この書き方なら、反省ではなく理解につながり、次にどうしたいかをやさしく考えられるようになります。
手帳ワーク③|もう手放していい習慣・考え方リスト

1年を振り返ると、「あのときは、少し頑張りすぎていたな」「本当は無理をしていたかもしれない」と感じる場面が見えてくることがあります。
このワークでは、そんな気づきをそのままにせず、来年にわざわざ持ち越さなくてもいい習慣や考え方を意識的に書き出していきます。これは反省や自己否定のためではなく、これまでがんばってきた自分を労わるための作業です。
減らす、手放すという選択は、ときに勇気がいります。でも、すべてを抱え続ける必要はありません。重たくなっている思考や義務感を書き出してみることで、「なくても大丈夫だったもの」「手放したほうが楽になるもの」が少しずつ見えてきます。
余計な荷物を下ろすことで、心には自然と余白が生まれます。その余白こそが、来年を無理なく、自分らしく進んでいくための土台になります。
「頑張りすぎ」を降ろすワーク
完璧を求めていたこと、人と比べていたことなど、手帳に出してみると、これまで無意識に背負っていた重さに気づくことがあります。「ちゃんとやらなきゃ」「もっとできる人がいるのに」と自分を追い立てていた思考も、文字にすると少し距離を置いて眺められるようになります。
他人の基準や理想像ではなく、自分のペースで進んできた事実を確認することが、このワークの大切なポイントです。
やらなくてよかったことにも価値がある
続けなかった選択も、決して間違いではありません。やめたからこそ守れた時間や、心の余裕があったはずです。無理をしなかったからこそ続いた関係や、自分を大切にできた瞬間もあったでしょう。
「やらなかったこと」を責めるのではなく、「選ばなかったことで得られたもの」に目を向ける。
この視点を持つことで、1年の振り返りはぐっとやさしいものになっていきます。
手帳ワーク④|来年に持ち越したい「好き・大切」メモ

目標が思い浮かばないときは、無理にひねり出そうとするよりも、「好き」や「大切」に目を向けるのがおすすめです。やりたいことや数値目標が浮かばなくても、それは決して悪い状態ではありません。
このワークは、来年を具体的に決めるためのものではなく、その手前にある“準備段階”。
いまの自分が何に心を動かされ、何を大切にしたいと感じているのかを確かめる時間です。
価値観を一つひとつ言葉にしていくことで、自分の内側にあった軸が少しずつ輪郭を持ち始め、結果として来年の方向性が自然と見えてくるようになります。
目標が浮かばない人のための準備ワーク
無理に目標を決めなくても大丈夫です。年末になると「来年は何を目指せばいいんだろう」と焦りを感じることもありますが、言葉が浮かばないのは、まだ整理の途中というだけ。まずは「これは大切だった」「これは好きだと感じた」と思えたことを、思い出せる範囲で書き出してみましょう。仕事でも、暮らしのことでも、人との関わりでも構いません。評価や優先順位をつける必要もなく、ただ思いついたまま並べることがポイントです。
価値観が言語化されると迷いが減る
自分が大切にしたい軸が少しずつ見えてくると、不思議と気持ちは落ち着いてきます。「これを大切にしたい」という基準が言葉になることで、来年何かを選ぶときの判断がしやすくなるからです。
すぐに大きな目標が定まらなくても問題はありません。価値観が整理されていれば、その都度の選択に迷いにくくなり、結果として納得感のある1年を過ごしやすくなります。
手帳ワーク⑤|年末の自分へひとことメッセージ

最後は、今年の自分に向けて、そっとメッセージを書いて終わります。ねぎらいの言葉でも、「よく頑張ったね」という一文でも、あるいは静かな感謝の気持ちでも構いません。誰かに向けるように言葉を選ぶ必要はなく、素直な気持ちをそのまま書いてみるだけで大丈夫です。
このひとことは、1年間を通して積み重ねてきた時間や感情を静かに受け止め、心を落ち着かせる役割を果たしてくれます。慌ただしい年末の中で、このメッセージを書く時間が、1年をきれいに、そしてやさしく締めくくってくれるはずです。
ねぎらいの言葉を書いて終える意味
誰かに向けるように、自分にも労いの言葉をかけてみましょう。「よく頑張った」「ここまで来られたね」と声をかけるだけで、張りつめていた気持ちがほどけ、心がふっと軽くなります。
人には自然と優しい言葉をかけられても、自分自身には厳しくなってしまうものですが、このワークではあえてその立場を逆にしてみてください。
自分をねぎらう一行は、1年間積み重ねてきた努力や感情を受け止め、安心して年を終えるための大切な区切りになります。
新年に読み返すための仕上げワーク
このページは、書いて終わりではありません。年明けに読み返すことで、「あのときの自分は、こんなふうに感じていたんだ」と静かに振り返ることができます。その感覚が、新しい年を無理なく、前向きに始めるための助けになります。
勢いよくスタートを切らなくても大丈夫。落ち着いた気持ちで一歩を踏み出せること自体が、十分に良いスタートです。
「ここまで書いてみて、目標を整理したくなったら」
整った手帳は、新年をラクにしてくれる

ここまで紹介したワークは、全部を完璧にやり切る必要はありません。ひとつでも「これなら書けそう」「今の自分に合っていそう」と感じたものがあれば、それだけで十分です。大切なのは、年末の忙しい中でほんの少しでも立ち止まり、自分のために整える時間を選んだという事実。その選択そのものが、すでに大きな前進です。
1年をきちんと終えられた人ほど、新年は力まずに始められます。
やるべきことに追われるのではなく、「今の自分はどうありたいか」を静かに意識しながらスタートできるからです。手帳に残した言葉は、迷ったときや疲れたときに、そっと立ち返れる場所になります。
年末に書いたページは、未来の自分を縛るものではありません。むしろ、必要なときに背中を押してくれる“やさしい支え”のような存在です。あなたの手帳が、来年の日々を少しラクに、少し穏やかにしてくれるパートナーになりますように。
全部やらなくていい理由
年末のワークと聞くと、「全部やらなきゃ意味がないのでは?」と感じる人もいるかもしれません。でも実際は、その逆です。整う感覚は“量”ではなく“向き合った時間”から生まれます。
たとえ5つのうち1つだけでも、そのワークにしっかり向き合えたなら、それだけで十分価値があります。無理に完璧を目指そうとすると、かえって心が疲れてしまい、書くこと自体が負担になりがちです。
年末は、ただでさえ忙しい時期。だからこそ、「やれるところだけでいい」「書けた分だけで大丈夫」と自分に許可を出してあげることが大切です。その余白があるからこそ、手帳は“義務”ではなく“味方”になってくれます。
できた分だけ、ちゃんと前に進んでいる
手帳に残ったページが少なく感じても、それは決して後退ではありません。書いた量に関わらず、ペンを手に取り、自分の1年を振り返ろうとした時点で、あなたはすでに前に進んでいます。
小さな気づきや、短い一言でも、それは確かに積み重なった証です。歩幅は人それぞれで、進み方に正解はありません。できた分だけ進んでいる──この感覚を持って年を終えることが、新年を軽やかに始める一番の土台になります。
記事全体の総括

本記事では、年末という節目に「計画を立てる前に、まず整える」ことの大切さを軸に、5つの手帳ワークを紹介してきました。
できたことを丁寧に拾い集め、心に引っかかっていた出来事を言葉にし、頑張りすぎていた習慣をそっと手放す。そして、自分が大切にしてきた価値観を確かめたうえで、最後に今年の自分自身をねぎらう──その一連の流れは、単なる振り返りではなく、1年をきちんと「終える」ための時間です。
どのワークも、完璧にこなす必要はありません。ほんの一部でも、自分の言葉で書き出した瞬間、その時間は確かにあなたの心を整えています。
忙しさの中で後回しにしてきた気持ちに目を向け、「ここまでよくやってきた」と認められたなら、それだけで十分です。
整えた手帳は、未来を縛るものではなく、迷ったときに立ち返れる場所として残り続けます。
年末に少し立ち止まり、ペンを持つ時間を選んだあなたは、もう次の一歩に向かう準備ができています。今年をやさしく閉じることができた人ほど、新しい年は無理なく、自然体で歩き出せます。
まずは今日、5分で構いません。手帳を開き、今の気持ちを一行書いてみてください。その小さな行動が、来年のあなたを確かに支えてくれるはずです。

