「来年の目標を立てたいのに、何を目指せばいいのかわからない」。そんなふうに感じているなら、先にやるべきなのは“新しい目標探し”ではなく、この1年をやさしく振り返ることです。
目標が続かない人の多くは、意志が弱いのではなく、自分に合っていない目標を無理に掲げているだけ。1年の振り返りは、頑張れなかった理由を責める時間ではありません。
どんな瞬間に心が軽くなったか、どんなときに「これは違う」と感じたかを見つめ直すことで、自分にとって自然で無理のない目標のヒントが浮かび上がってきます。
このページでは、書くだけで思考が整理でき、来年につながる「1年の振り返りワーク」を順を追って紹介します。
ノート1冊と少しの時間があれば大丈夫。読み終えるころには、「これならできそう」と思える目標が、あなたの言葉で見えてくるはずです。
結論:1年の振り返りが「自分に合う目標」への近道になる

1年の振り返りは、反省会でも自己分析のテストでもありません。一番の目的は、「私はどんなときに心地よく過ごせていたか」を知ること。その積み重ねこそが、自分に合う目標の材料になります。振り返らずに立てた目標は、どうしても理想論や他人基準になりがちです。
一方、過去の経験を土台にした目標は、無理がなく、行動まで落とし込みやすいのが特徴。まずは結論として覚えておくのは、「来年を変えたいなら、今年の自分をちゃんと知ること」。これが、目標迷子から抜け出す一番の近道です。
なぜ目標が続かないのか?よくあるつまずきパターン
多くの人が目標を途中で手放してしまう理由は、「高すぎる」「抽象的すぎる」「本音ではない」のどれかです。
例えば、
・周りがやっているから決めた目標
・できたらいいなレベルの願望
・過去の自分を否定するような目標
こうした目標は、気持ちが疲れた瞬間に簡単に遠ざかってしまいます。続かない=ダメ、ではなく、「合っていなかっただけ」と捉え直すことが大切です。
振り返りを通して見えてくる「自分らしさ」と価値観
1年を振り返ると、意外にも何度も出てくる感情や出来事があります。
・これをしているときは楽だった
・これは無理をしていた
そうした共通点こそが、あなたの価値観です。目標は、この価値観に沿っているとき、自然と力を発揮します。
準備編:振り返りを始める前に整えたい3つのこと

振り返りをスムーズに進めるために、最初に整えておきたいことがあります。ここを丁寧にすると、途中で手が止まりにくくなります。
振り返りに使うノート・手帳・ツールを選ぶポイント
特別なノートは必要ありません。
・手帳の空きページ
・罫線のあるノート
・スマホのメモ
「すぐ書ける」「開くのが面倒じゃない」ものを選びましょう。続けやすさが最優先です。
落ち着いて振り返れる「時間」と「場所」の決め方
おすすめは、10〜20分だけ確保すること。
・寝る前
・朝のコーヒー時間
・休日の少し静かな時間
長時間やろうとしないのがコツです。
完璧主義を手放すための“ゆるいマイルール”づくり
「全部書かなくていい」「途中で終わってもOK」と最初に決めておきましょう。完成よりも、向き合ったこと自体が価値です。
人生の5つの領域でこの1年を振り返る

漠然と1年を振り返ろうとすると、思い出すことが多すぎて、考えがあちこちに散らばってしまいがちです。「何から書けばいいのかわからない」「考えているうちに疲れてしまった」という経験がある人も多いでしょう。そんなときに役立つのが、振り返りをいくつかの“領域”に分けて考える方法です。
仕事やお金、人間関係、健康や暮らし、趣味や学び、そして心の状態といったように枠組みを用意することで、思考の整理がしやすくなります。どれも完璧に書く必要はありませんが、分野ごとに視点を切り替えることで、「ここはよく頑張っていた」「ここは少し無理をしていたかもしれない」といった気づきが浮かびやすくなります。領域で区切る振り返りは、見落としていた自分の一面にやさしく光を当ててくれる方法です。
仕事・お金:頑張りどころと、手放したい無理
仕事や家計について振り返るときは、「成果」や「反省点」だけに目を向ける必要はありません。まずは、この1年で自分がどこに力を注いできたのかを、事実ベースで書き出してみましょう。
・無理をした場面
・意外とうまくいったこと
・頑張りすぎていたと感じた時期
・肩の力が抜けていたタイミング
こうして並べてみると、「本当はここまで頑張らなくてもよかったこと」や、「思っていたより順調だったこと」が見えてきます。嫌だった出来事や大変だった記憶にも、次に同じ状況になったときのヒントが必ず隠れています。仕事やお金の振り返りは、来年の働き方や暮らし方を少し楽にするための材料集めだと考えてみてください。
家族・人間関係:大切にしたいつながりはどこだった?
人間関係の振り返りでは、「うまくやれたかどうか」よりも、「どんなときに安心できたか」に注目するのがおすすめです。気持ちを素直に話せた相手、会うとほっとした人、逆に無理に合わせて疲れてしまった場面などを思い出してみましょう。
距離を置いてよかった人や、関係性を少し見直してよかった出来事があれば、それも大切な気づきです。人間関係は、すべてを維持する必要はありません。自分の心が消耗しなかったつながりを大切にすることで、来年の暮らしには自然と心の余白が生まれていきます。
健康・暮らし:心と体がほっとした瞬間を思い出す
よく眠れた日、気分が軽かった習慣を書いてみましょう。健康の軸は、目標の土台になります。
趣味・学び:ワクワクしたこと・続けられたこと
小さな「楽しい」を拾うことで、来年のモチベーション源が見えてきます。
心の状態・価値観:嬉しかった言葉・モヤモヤした出来事
感情が動いた出来事は、自分の大切なものを教えてくれます。
書くだけで整理できる「1年の振り返りワーク」5ステップ

ここからは、この1年を言葉にしながら整理していく、具体的なワークに入ります。難しいことを考えたり、上手にまとめたりする必要はありません。用意するのは、ノートや手帳と、少しだけ自分と向き合う気持ちだけ。順番に問いに答えるように書いていくだけで、頭の中に散らばっていた出来事や感情が、少しずつ整理されていきます。すべてのステップを完璧にこなさなくても大丈夫です。気になるところから始めたり、書ける部分だけ拾ったりしてもOK。このワークは、自分を評価するためのものではなく、この1年を過ごしてきた自分を理解するための時間です。力を抜いて、今の気持ちのまま、書けるところから進めてみましょう。
ステップ1|1年の出来事を月ごとにざっと書き出す
まずは、この1年に起きた出来事をざっくりと思い出すところから始めます。細かく正確に思い出そうとする必要はありません。「あの頃、こんなことがあったな」と浮かんでくる断片で十分です。完璧に思い出せなくても大丈夫。思い出そうとする過程そのものが、振り返りになります。
・印象に残った出来事
・季節ごとの記憶
・生活の変化があったタイミング
こうした視点で、月ごと、もしくは季節ごとに箇条書きで書いていきましょう。1行ずつでも問題ありません。
ステップ2|その時感じていた気持ち・本音をメモする
次に、その出来事のとき自分がどんな気持ちでいたのかを書き添えます。難しい言葉を選ぶ必要はなく、「楽しかった」「疲れた」「ホッとした」「しんどかった」など、短い感情の言葉で十分です。正解はありません。誰かに見せるものではないので、できるだけ正直な本音を書いてみましょう。気持ちを書くだけで、出来事の意味が少し変わって見えることがあります。
ステップ3|うまくいったこと・いかなかったことに分ける
最後に、書き出した出来事を「うまくいったこと」と「いかなかったこと」に分けてみます。ここでは評価や反省は一切不要です。「良い・悪い」ではなく、あくまで分類するだけ。線を引いたり、丸をつけたりする程度で構いません。この仕分けをすることで、この1年の傾向や、自分が力を使いすぎていたポイントが自然と見えてきます。
ステップ4|大事にしたいことを拾い上げる
ここでは、これまで書き出してきた出来事や感情の中から、何度も登場する言葉や感覚に注目してみましょう。例えば「安心」「疲れた」「楽しかった」「無理していた」など、似たような表現が繰り返し出てきていないかを眺めてみます。これは良い・悪いを判断するためではなく、「自分が何に反応しやすいか」「どんな状態を大事にしているか」を知るための作業です。キレイにまとめなくても構いません。線を引いたり、丸をつけたりしながら、“これは大切かも”と思うポイントを拾い上げていくだけで十分です。
ステップ5|来年やめたいこと・続けたいことを一言にする
最後に、ステップ4で見えてきたキーワードをもとに、「来年は手放したいこと」「これからも続けたいこと」をそれぞれ一言で書いてみましょう。長い文章にする必要はなく、「無理な予定を詰めない」「心地いい習慣を守る」といった短い言葉でOKです。言葉を削ぎ落とすことで、自分にとって本当に大事な軸が浮かび上がってきます。この一言は、来年を迷わず進むための簡単なコンパスになります。
振り返りから生まれる「自分に合う目標」の見つけ方

1年の振り返りをしていると、「結局、来年は何を目標にすればいいのだろう」と手が止まる瞬間が出てきます。やりたいことがはっきりしない、どれもピンとこない、あるいは目標を立てること自体に少し疲れてしまった──そんな感覚はとても自然なものです。ここで大切なのは、無理に立派な目標をひねり出そうとしないこと。振り返りの目的は、未来をコントロールすることではなく、「自分はどんな状態だと心地よく生きられるのか」を理解することにあります。
振り返りの中に出てきた小さなエピソードや感情は、すでに“自分に合う目標”の種です。楽しかった瞬間、続けられた習慣、逆にしんどかった出来事。その一つひとつを丁寧に眺めていくと、「頑張りたい方向」と「もう無理をしなくていい方向」が自然と分かれてきます。目標は、ゼロから作るものではなく、過去の自分の中から見つけ出すもの。この章では、振り返りで拾い上げた気づきを、無理なく行動につながる“自分仕様の目標”へ変えていく考え方を紹介していきます。
「やりたいこと」よりも「心地よかった瞬間」をヒントにする
目標を考えるとき、多くの人は「やりたいことは何か?」から探し始めますが、実はそれよりも確実なのが「心地よかった瞬間」を手がかりにする方法です。特別な成果や大きな達成感でなくても構いません。何気ないけれど続けられていた行動や、終わったあとに気持ちが軽くなっていた時間を思い出してみましょう。そうした瞬間には、無理がなく、自分の性格や生活リズムに合った要素が含まれています。無理なく続いた行動から目標を作ると、気合や根性に頼らなくても自然と行動が続き、結果として挫折しにくくなります。
大きなゴールより“今年のテーマ”を決める
「◯◯を達成する」といった大きなゴールは分かりやすい反面、途中で苦しくなりがちです。そこでおすすめなのが、“今年のテーマ”を先に決めること。「整える」「楽しむ」「余白をつくる」など、少し抽象度の高い言葉で構いません。テーマは、その1年の判断基準になります。迷ったときに「この選択は、今年のテーマに合っているか?」と問いかけるだけで、目標や行動がぶれにくくなります。ゴールを無理に定めなくても、テーマがあれば方向性は十分に保てます。
小さな行動に落とし込むコツ
テーマや目標が見えてきたら、次は行動に移す段階です。ここで意識したいのは、「今日できることレベル」まで分解することです。来年・今月・今週…と考える前に、「今日の自分が無理なくできる一歩は何か」を書き出してみましょう。行動が大きすぎると、頭では理解していても体が動きません。ハードルを意識的に下げることで、「やってみよう」という気持ちが生まれ、自然な行動の流れができていきます。
手帳やノートに落とし込むときの書き方アイデア

ここまで振り返りを進めてきたら、次はそれを「見返せる形」に残していく段階です。せっかく気づいたことや見えてきた目標も、書きっぱなしにしてしまうと、日々の忙しさの中で少しずつ忘れてしまいます。だからこそ大切なのが、手帳やノートといった“普段使いのツール”に落とし込むこと。特別なまとめ方をする必要はなく、開いたときに自然と目に入る場所に、自分の言葉で書いておくことがポイントです。振り返りと目標は、完成させるものではなく、何度も行き来しながら育てていくもの。ここでは、無理なく続けられて、気持ちが重くならない書き方のアイデアを紹介します。
年間テーマと一言メッセージを書く
年間テーマは、その1年をどう過ごしたいかを思い出させてくれる“道しるべ”のようなものです。完璧な言葉を探す必要はなく、「整える」「ゆとりを持つ」「自分を大事にする」など、少し抽象的な表現で構いません。そのテーマに、今の気持ちを表す一言メッセージを添えてみましょう。手帳の最初のページに書いておくと、迷ったときや気持ちが揺れたときに、自然と立ち返れる軸になります。
3ヶ月ゴール・1ヶ月ゴールに分ける
大きな目標を一気に達成しようとすると、どうしても負担が大きく感じられます。そこでおすすめなのが、1年の目標を3ヶ月、さらに1ヶ月単位に分けて考える方法です。短期間のゴールは達成したかどうかが分かりやすく、行動にも移しやすくなります。「今月はここまででOK」と区切ることで、自分を追い込みすぎずに前進できます。
“毎朝5分”で見直すミニ習慣
目標やテーマは、一度書いたら終わりではありません。毎朝5分だけ手帳やノートを開き、目に通す習慣をつくってみましょう。短時間でも繰り返すことで、「今日はこれを意識しよう」と気持ちを整えることができます。積み重ねるうちに、振り返りや目標確認が特別な作業ではなく、安心感を生む日常の一部になっていきます。
振り返りが苦手・続かなかった人のためのQ&A

ここでは、「振り返りが苦手」「毎年やろうと思っても続かなかった」という人が感じやすい悩みに、先回りして答えていきます。1年の振り返りは大切だとわかっていても、いざ書こうとすると手が止まったり、気分が重くなったりすることは珍しくありません。途中で飽きてしまう人もいれば、ネガティブな出来事ばかり思い出してしまい、「やらなければよかった」と感じる人もいます。また、せっかく振り返っても、次の行動や目標につながらず、ノートを閉じたままになってしまうケースも多いでしょう。このQ&Aでは、そうした“つまずきポイント”を自然な感情として受け止めつつ、気持ちが楽になる考え方や、無理なく続けるための工夫を紹介します。完璧な振り返りを目指す必要はありません。ここを読みながら、「それなら私にもできそう」と思える部分だけを拾ってもらえれば十分です。
Q1|途中で飽きてしまう
振り返りが途中で飽きてしまう一番の原因は、「量が多すぎる」「一気にやろうとしすぎる」ことです。最初から完璧に1年分を書こうとせず、量をぐっと減らしてみましょう。例えば、1ヶ月につき1行だけ、あるいは「印象に残った出来事を3つだけ」と決めるだけでも十分です。時間も長く取る必要はありません。5分、あるいは3分でもOKです。「飽きずに終われた」という感覚が残ることのほうが、次につながります。
Q2|ネガティブになる
振り返りをしていると、どうしても失敗や後悔が先に浮かぶことがあります。そんなときは、書いたあとに必ず「それでも○○だった」「そこから△△を学んだ」と一言添えてみてください。出来事そのものを無理にポジティブに変える必要はありません。「あの経験があったから、今はこう思えている」と視点を少しずらすだけで十分です。ネガティブな感情に気づけたこと自体も、大切な振り返りの成果です。
Q3|行動につながらない
振り返りをしても行動につながらない場合、多くは目標が大きすぎるか、日常と結びついていないことが原因です。「来年は変わる」ではなく、「明日これをやってみる」まで落とし込めているかを見直してみましょう。行動が重いときは、行動を半分、さらに半分にしても構いません。小さくても実行できる一歩が、結果的に一番遠くまで運んでくれます。
Q4|時間がない
忙しい毎日の中で、まとまった時間を取るのは難しいものです。そんなときは、「きちんと振り返る」発想を手放しましょう。3分だけでも、1つ質問に答えるだけでも十分です。通勤前、寝る前、コーヒーを入れる間など、すき間時間でできる形にすると、振り返りはぐっと身近になります。短い時間でも繰り返すことで、自然と自分の考えが整理されていきます。
まとめ:完璧じゃなくていい、「今年の私」をやさしく振り返ろう

振り返りは、過去を裁いたり、できなかった自分を責めたりするためのものではありません。この1年をどう生きてきたのかを静かに見つめ直し、今の自分を理解するための時間です。「うまくできなかったこと」よりも、「それでも続けてきたこと」「少しでも前に進めたこと」に目を向けてみてください。そうした小さな事実の積み重ねが、来年の自分を支える土台になります。
完璧な振り返りや、立派な目標は必要ありません。書き出した言葉が少なくても、途中で手が止まっても、それはそれで十分意味があります。振り返る時間そのものが、自分を大切に扱っている証拠だからです。小さな気づきや「これだけは大事にしたい」という感覚が、少しずつあなたに合う目標の形を教えてくれます。このワークを通して見えてきた“今年の私”を、そのまま抱えて、無理のない一歩で次の一年へ進んでいきましょう。
